帰路

終電の改札を出て家に向かう なにやら今日は足音いっぱい聞こえる

間隔の短い足長い足 音が高い足低い足 かけるように歩く足ふむしめて歩く足 引きずって歩く足ドンドン歩く足

いろんな足があってみんな素敵なの 夜はみんなの足が聞こえて素敵なの

でも全部が調和することなんてない 恐竜の時代も猿の時代も変わることがない

今朝は道端に草が生い茂っていた 身体測定みたいにみんな我先に背伸びしてた

でも、今はもう全部なくなってたんだ 機械でガーって無差別に刈られちゃったんだ

いつもの道をイヤホンもしないで歩く 帰り道はいろんな虫が合唱している

ミンミンゼミコオロギ あとはもうわかんない。 でも名もなき虫たちが楽しそうに歌ってるんだ。

その横をトラックが過ぎ行く。 轟音という無差別テロを携えて。

空を見ると無数の星が自己主張している どの星もみんな綺麗なんだよ 大きな星も小さな星も 白っぽい星もオレンジっぽい星も

玄関先にはコガネムシがいた。 合唱からはぐれちゃったのかな。 それともわざと一人でいたいのかな。 一人、ね、

星は上を見なきゃ見えないし 虫は下を見ないと見えない。 星は田舎じゃないと見えないし 虫は東京では邪魔者扱いだ。

みんな生きにくいのかな